青年海外協力隊 ニジェール活動日記
2006/07/22〜2006/10/30
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2年前に訓練所の敷地に埋めたタイムカプセル |
帰国
2004年3月の技術補完研修から始まった協力隊への参加は、2年と4ヶ月後の2006年7月に無事終了しました。ニジェールの同期9人は、病気や怪我で一時帰国や任期短縮することなく、全員無事活動をやり遂げて任期を終えることができました。
協力隊は病気や怪我、現地の人との人間関係や精神面で問題を抱えて活動を断念する隊員も多く、亡くなることもまれではありません。治安悪化で任期途中にして任地を変えたり、帰国しなければいけなくなることもあります。同期が全員無事に活動を終えられたのは、本人達の努力だけでなく、JICAのサポートや隊員同士の助け合い、現地の人たちの理解や助け、そして多くの運にも恵まれたお陰だと思います。
定期報告としては最後になるこの第15号報告では、帰国後のスケジュールや2年ぶりの日本の印象、そして日本でも続くニジェールとの交流について報告します。
帰国後のスケジュール
日本に帰国した隊員は全員、すぐ東京のJICAで2日間かけて帰国時研修・面談と健康診断を受けます。研修の内容は今後の進路や協力隊経験の活かし方についてで、面談では自分の活動や任国の状況について協力隊事務局の派遣国担当者や技術顧問へ15分程度報告を行います。外務省から賞状と記念メダルの授与もあります。また、退職参加者のうち希望者は3日目に進路カウンセラーと面談することも出来ます。
この後、隊員は出身都道府県に戻り、出発時と同じように都道府県庁、市町村役場を訪問し帰国報告を行います。出発時と違って帰国時の帰国報告は義務ではありませんが、役場によっては記念品を用意したりして待っているところもあるらしいので、なるべく行ったほうが良いでしょう。自分の場合は、市役所と県庁に行ったら新聞やテレビ
の取材も来ていて、その日の晩のローカルニュースや次の日の朝刊に表敬の様子が出てびっくりしました。
復職
私は民間企業からの現職参加だったため、帰国後1週間目の7月28日に復職しました。仕事に全然ついていけなかったらどうしようかと初めは不安でしたが、派遣中も全く畑違いのことをやっていたわけではなかったので案外ギャップはありませんでした。2年前と同じ場所で、ほとんど同じスキルを使う仕事に戻れたせいもあります。
それでも最初非常に困ったのが、午後になると猛烈に眠くなってしまうことです。さすがに自席で寝ることはしませんでしたが、頭がぼうっとして仕事に集中できません。これが1ヶ月近く続きました。時差ぼけと、ニジェールでは昼休みが3時間あって必ず寝ていたのでその反動だと思いますが、なかなか直らず苦労しました。聞けば他の隊員も同じ症状で苦しんでいたようです。幸い、上司が初め仕事量を手加減してくれていたり、帰国した時がちょうど夏休み時期で職場自体も夏休みを取っている人が多くのんびりしていたこともあって乗り切ることができました。
駒ヶ根同窓会
帰国後1ヶ月経った8月中旬、16年度1次隊駒ヶ根訓練所卒の隊員十数名が訓練所に集まり、同窓会を行いました。訓練所は以前のままで、あれから2年経ったのが信じられません。スタッフの人や語学の先生との再会もありました。
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訓練中は時間が無くて行けなかった駒ヶ根
・千畳敷にも登りました。赤茶の大地に慣れた目には日本の緑は眩しいほどに豊かで、日本では人は自然に抱かれて生きているのだなと思いました。 |
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駒ヶ根訓練所の敷地に2年前に埋めたタイムカプセル
を皆で掘り出しました。タイムカプセルには出発前に各人が自分宛に書いた手紙が入っていて、掘り出したあとそれぞれの帰省先に発送しました。 |
日本の印象
2年ぶりに戻ってきた日本の印象を書いてみたいと思います。
感動したところ
- 食べ物が美味しい(特に日本米)!
とにかく食べ物が美味しいことに感動しました。帰国直後友達と食べに行った時、友達が「この店いまいち」と言っているのに全部おいしく頂いてしまいました。特に日本米
が美味しい!ニジェールでも、日本米でご飯を炊いたことはありますが、水の違いのせいか味が全然違います。
- お店にものがありすぎ!
初めてスーパーに買い物にいったとき、あまりに膨大な量のモノが並んでいて気が遠くなってしまい
ました。自分が探していた物も何種類も棚に並んでいて目移りしてしまいます。ニジェールなら探し物があればラッキーで、探し物の中でいろいろ選べるなんてことはまずありませんでした。
- 接客が真面目で丁寧
日本の接客は誠心誠意で本当に丁寧に感じました。何か頼めばすぐ持ってきてくれるし、自分の手が空いていなければ他の店員を呼んだりして必ず対応してくれます。これはお店やレストランだけでなく自分の会社の中でも同じで、他部門の人に何か依頼したりすると、必ず、速やかに、正確に、丁寧に答えが返ってくるのには驚きました。
- お店の中が明るい!
だいたい店内が薄暗いことが多いニジェールと比べると、日本のお店の明るさはまるで日差しの下のようです。特にレストランは、ニジェールだと料理が見えないくらい暗いこともよくありますが、日本ではそんなことはありません。
- とにかく食べ物屋が多い!
どこを歩いても、どんな時間でも食べ物屋やコンビニがあり、食いっぱぐれることがないのが非常に嬉しかったです。
- 100円ショップが安い!
100円ショップの安さは驚異的でした。ニジェールの市場とほとんど変わらないか、ずっと安い値段で、遙かに高い品質のモノが買えます。日本とニジェールどちらも中国製で、輸送費などで日本が有利なこともありますが、日本人の品質チェックが入っているものとそうでないものでこれだけ違いがあるとは驚きです。
ちょっと違和感があったところ
- お店の人とのコミュニケーションが無い
お店に入っても店員が「いらっしゃいませ」と言うだけで客は無言なのが最初かなり違和感がありました。ニジェールでは客が店の人に挨拶してから中のものを見せてもらうという感じなので、日本でもついつい店員に挨拶したくなってしまいます。日本はお客様至上主義なんですね。
- 文句を言ってくれない
駅なのでこちらが階段を下りるのをもたもたしていた時など、舌打ちして迷惑そうに横をすり抜けていく人がいますが、最初それに恐怖を感じました。「ちょっと済みません」と言ってくれればこちらも気づいて道を空けることも出来たのに、何も言わず黙って耐えて、最後舌打ちして去っていくのは非常に陰湿な感じがします。ニジェール人も案外不満を言わずに溜めこむところはありますが、日常のことはあっけらかんと文句を言ってくるのでコミュニケーション不足で不安を感じることは少ないです。
- マニュアル定員は機械みたい
先ほど上で接客は丁寧と書きましたが、融通の利かないアルバイト定員は別です。何でも融通が利くニジェールの定員から比べると、まるで機械です。
- 日本はジメジメ・・・何でもかびだらけ
食べ物だけでなく、皮やスポンジ地のカバンにびっしりカビが生えていたのには参りました。生ゴミも乾かず、すぐ虫が湧いてしまいます。雨も多く、洗濯物を乾かすのに困りました。
二年間で変わったところ
行っている間に日本は変わったなと感じたところを挙げます。
- クールビズ
これは初出勤の時に本当にびっくり
しました。職場はサラリーマン街の中にあるので、以前は夏でも町ゆく人は皆スーツ&ネクタイがあたりまえだったのですが、今回はスーツどころかネクタイを締めているひともちらほらとしかいません。ネクタイ
を買いにいっても、以前より店の品揃えがかなり少なくなっていました。
- 光ファイバー
親戚も友達も、皆光ファイバーでインターネットをしていました。ニジェールでさんざん苦労して繋げた回線(64kbpsで月3万円)より1000倍速い回線が1/5の値段で使えるのですから、やっぱり日本のインターネットインフラは世界トップだと思います。
- 地上波デジタル
地上波デジタルが始まっていました。こんなクオリティの画像や、番組表が画面で見られるシステムがそのうち当たり前になるなんて信じられません。
- おさいふケータイ
おさいふケータイ対応のコンビニがたくさんあるのに驚きました。イオカードが廃止になっていたのにもびっくりです。
- 無線LANとIP電話
行く前はまだ一部の人しか使っていなかった無線LANとIP電話が、当たり前に使われるようになっていました。この間行われた情報処理試験でも、設問の1/4くらいは無線LANとIP電話関係で、時代の変化を感じました。
- コンプライアンス
以前より格段にコンプライアンス(企業の社会的責任)がうるさくなったと思います。業務で行うこと以外は基本的に個人が自らの責任で行い、その結果は個人と社会の間のルールで解決されるべきで、当人を雇用する会社や組織が個人の業務外の行動に口を出したり責任を取ったりするのは過剰なように感じますが、今や車が来ていないときに信号無視して横断歩道を渡ることすら「通報されて会社に迷惑がかかるのでは・・・」と思うような状態になっていますね。ちょっと息苦しい社会になってきました。